「パスツレラ症」という言葉を聞いたことがありますか?
パスツレラ症とは、くしゃみや鼻水などの症状から始まり、重症化すると肺や目、脳などに感染して、ほうっておくと死んでしまうこともある危険な病気です。
しかも、一度かかると完治までに時間がかかるガンコな病気でもあります。大切なうさぎの健康と命を守るためにも、ここで紹介するパスツレラ症の特徴や予防方法、治療方法をチェックしておきましょう。
うさぎのパスツレラ症とは
うさぎのパスツレラ症とは、くしゃみや鼻水などを引き起こす病気です。
ですがそれだけ? とあなどるなかれ。重症化すると、命にも関わることがある危険な病気なのです。
パスツレラ症の特徴としては、以下のようなものがあります。
- くしゃみやせき、鼻水・鼻づまりを起こす
- ズーズーと鼻を鳴らすようになる
- 前足の内側の毛がぬれている、または固まってゴワゴワしている
- 目から涙や目やにが出やすくなる
- 首が傾いたまま戻らなくなる
私のうさぎ友達の間でも、よく感染したと聞く症状です。中には何カ月もかけて治療に専念しているという飼い主もいます。とても怖く、あなどれない病気ですね。
そんなパスツレラ症とはどんな病気なのか? どんな怖い症状があるのか? そもそも、パスツレラってなに?
その疑問にこれからお答えしてゆきますので、ぜひ読み込んでみてください。
パスツレラ菌について
パスツレラ症は、「パスツレラ菌(パスツレラ-ムルトシダ)」といわれる菌によって引き起こされます。
しかし、この菌に感染していても、すぐには症状が出ないことがほとんどです。イヌやネコはほとんどが保有しており、うさぎも多くの個体が菌を持っています。
この菌を持っているだけなら症状は出ません。しかし、ストレスや加齢などの影響で、免疫力が低下してしまうとくしゃみや鼻水といった症状を出し、「パスツレラ症」となるのです。
感染していく経路
感染経路はおもに接触や、飛沫感染(ひまつかんせん)です。
うさぎを複数羽飼っている場合は、
- 感染しているうさぎが他のうさぎに触れること
- 感染しているうさぎによるせきやくしゃみから、他のうさぎに菌が飛んでいく
このような感染経路によってうつってしまいます。
パスツレラ症を発症したうさぎがいる場合は、他のうさぎとは別の部屋へ移動させましょう。
パスツレラ症の原因
パスツレラ症を発症する原因は、加齢やそれによる免疫力の低下によるもの。
免疫力は、不適切な飼育環境やストレスによって低下してしまいます。
温度や湿度の調整、ケージの環境を整え、適切な量と質の食事を与えましょう。そして他のうさぎ・他の動物との過剰な接触を避け、騒音にも注意して過度なストレスを与えないように気を配りましょう。
くしゃみの多い高齢の子は感染している?
くしゃみをしているからといって、必ずしもパスツレラ症であるとは限りません。
くしゃみをする理由には病気によるもの以外にも、
- ゴミが入ってしまった
- 飼育環境によるアレルギー症状を起こしている
など、いくつかの理由が考えられるからです。
しかし、高齢のうさぎは免疫力も低下しているため、パスツレラ症の可能性は十分に考えられます。
うさぎの様子をよく見て、他にも症状がないか確認した上で、念のため病院に連れていくことをオススメします。
万が一にも、重症化しないよう十分に気をつかってあげましょう。
パスツレラ症はうさぎから人間に感染する?
画像引用:産経ニュース
動物から人間にも感染することがある病気のことを、人獣共通感染症(じんじゅうきょうつうかんせんしょう)といいます。パスツレラ症もそのひとつで、人間に感染することのある病気です。
しかし、うさぎから人間に感染するケースは、適切な飼育環境の元ではほとんどありません。ただし、パスツレラ菌に感染しているうさぎの鼻水・目やになどに触れた後に手を洗わない、うさぎとキスなどの過剰なスキンシップをする、などをしていると感染してしまうおそれがあります。また、免疫力の低い小さなお子様や年配のかたへも感染する可能性があります。
我が家のかわいいうさぎ。だからこそ、節度を持って接しましょう。
出典:横浜市衛生研究所
パスツレラ症に感染したうさぎの症状
パスツレラ症を発症すると、
- スナッフル(くしゃみ、鼻水、せき)
- 目(目やに、涙)
- 斜頸(首が傾いたまま戻らなくなる)
といった症状が出ます。
あなたのうさぎにはこういった症状は出ていませんか? 以下の項目でそれぞれを詳しく見てみましょう。
1.スナッフル
うさぎのくしゃみや鼻水、せきといった症状を総称して「スナッフル」と呼びます。
パスツレラ症を発症すると、うさぎにはまずこのスナッフルが表れることが多いのです。
症状の詳細は以下の通りです。
初期には水溶性の透明な鼻水やくしゃみがみられます。副鼻腔炎に進行すると鼻水は次第に粘液性になり、膿(のう)性に変化します。
不快感から鼻を前肢でこするため、鼻の周辺や前肢の内側の被毛が鼻水で汚れてガサガサになります。重症化すると、呼吸のたびに「ズーズー」といったスナッフリング・ノイズが聞かれるようになります。症状が軽いうちは見逃してしまいがちですが、進行すると肺炎になったり、胸に膿(うみ)がたまったりして呼吸困難となり、死に至ることもあります。なるべく早めに気づいてあげて、症状が軽いうちに動物病院を受診しましょう。
引用:どうぶつ親子手帳
あなたのうさぎは頻繁なくしゃみやせき、またネバネバとした黄色い鼻水を出していませんか? はじめは透明な鼻水ですが、悪化するとだんだん粘りや濁り、また膿性(うみが混入し、鼻水が黄色くなること)が出てくるのが特徴です。
このスナッフルの症状が出ていると、肺炎にまで発展してしまう可能性もあります。スナッフルがみられたら、パスツレラ症を疑い、早めに病院を受診しましょう。
2.目
パスツレラ症によって発症する目の異常には、充血や目やに、涙が出ることなどがあります。
パスツレラ菌が目に感染することにより結膜炎を起こし、こういった症状が表れることがあるのです。
症状の詳細は以下の通りです。
結膜炎になると目の充血がみられます。
瞼が腫れて瞼の裏側が見えてきます。
目ヤニも出てきます。
パスツレラ菌による結膜炎は、白いチーズの様な目ヤニが出て来るのが特徴です。
目頭の近くには涙が鼻へ流れる「鼻涙管」という管があります。
鼻涙管に炎症や感染が広がり、詰まってしまうと涙が通れなくなります。
目の涙は行き場がなくなり、外へ溢れ出してしまいます(流涙症)。
流涙症が続くと、目の周りが常に濡れて皮膚炎が起きてしまいます。
引用:こにし動物病院
目の異常があるからといって、必ずしもパスツレラ症とは限りません。しかし、何らかの病気を発症している可能性が高いので、病院を受診することをオススメします。
3.斜頚
斜頚(しゃけい)とは、うさぎが首を傾けたまま元に戻せなくなる症状です。神経系への異常によって起こる症状で、パスツレラ症による斜頸は、耳の中への菌感染による中耳炎・内耳炎が原因のことが多いのです。
この症状を発症すると自然と首が傾いてしまうため、うさぎは体を自由にコントロールできなくなってしまいます。それに不安を感じ、ストレスから食欲不振になってしまうことも。
また、斜頸はパスツレラ症以外にも、脳の異常が原因のこともあります。必ず病院を受診しましょう。
うさぎのパスツレラ症の治療方法
パスツレラ症はおもに抗生剤によって治療が行われます。まずは病院へ行き、パスツレラ症であるという診断をもらって、その子に合った抗生剤を処方してもらいましょう。
なおパスツレラ症は、一度かかってしまうと、完治は難しい病気です。パスツレラ菌はとてもガンコな菌なので、抗生剤を服用しても感染した菌を完全に殺してしまうことはできないのです。一度治癒しても、再発してしまう可能性があるということでもあります。
しかし完治はできなくても、予防や適切な対応により症状を抑えることはできます。無理に消そうとせずに、上手に菌と付き合っていくことを念頭に置きましょう。
出典:浅香山動物病院
パスツレラ症の予防方法
完全になくすことのできないパスツレラ菌。ガンコな菌ですが、パスツレラ症を予防することはできます。
- バランスよく食事を与える
- 衛生的な環境を保つ
- 室温23度、湿度50〜60%程度を保つ
- 空気の入れ替えをする
- 適度な日光浴ができるようにする(※ケージ全体が日に当たらないように!)
- 感染したうさぎがいる場合、他のうさぎと部屋を離す
これらのことに気をつけて、あなたの大切なうさぎの健康を守りましょう!
まとめ
今回は、うさぎのパスツレラ症についてご紹介しました。
パスツレラ症とは、
- うさぎの鼻水やくしゃみを伴う病気である
- 免疫力の低下によって発症する
- 他のうさぎにも感染するため、感染したうさぎは隔離が必要
- 人間にも感染することはある
- 感染するとスナッフル・目やに・斜頸などの症状が出る
- 感染した場合は抗生剤で治療する
- 予防には環境の整備が必要
というものでした。
もしあなたのうさぎさんがパスツレラ症の疑いがあっても、焦らないでください。まずはうさぎの様子をよく観察し、動物病院で相談し、きちんとした診断をもらいましょう。
堅実な判断が、あなたのうさぎをより長生きさせる秘訣です。
大切なうさぎとよりよい時間をすごすためにも、上手に病気の対策をしていきましょう。
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