「うさぎに水を飲ませると死んでしまう」という話を聞いたことはありませんか?
ひと昔前まで、うさぎは水を飲まなくていいといわれていました。しかし、それは迷信。うさぎはたくさん水を飲む動物なのです。
飼いうさぎの場合、おもなエサは水分量の少ない牧草とペレット。エサに含まれる栄養分を消化・吸収するためには、新鮮な水が欠かせません。
飲み水が不足すると、脱水症状になったり、消化器の動きが悪くなったりすることも。
今回はうさぎにとって大切な「水」のお話です。あたえかたのポイントや体調による飲水量の変化など、くわしく解説します。
うさぎにあたえる水の種類
- 水道水
- 浄水
- 湯冷まし
- ミネラルウォーター
うさぎにあたえる水といっても、このようにいろいろな種類があります。
水道水でも十分に安全ですが、カルキ(塩素)が気になる場合は浄水器を通したものや沸騰させて冷ましたものをあたえましょう。
ただし、カルキが含まれない水はいたみやすいので、こまめに交換してください。
ミネラルの多い水は注意【尿結石症】
ミネラルウォーターをあたえる場合は、硬水は避けましょう。
ミネラルウォーターには、軟水と硬水があります。ミネラル分を示した数値を「硬度」といい、水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量で算出されます。
WHO(世界保健機関)の基準では、
- 120㎎/l未満は軟水
- 120㎎/l以上は硬水
と分類されます。ちなみに東京都の水道水は、硬度60㎎/l前後。
うさぎはカルシウムの過剰摂取により、尿結石症という病気になりやすいので、水の種類にも注意が必要。
1日に飲む量とオシッコの関係
うさぎの飲水量は、1日に体重1kgあたり50~150mlとかなり個体差があります。
おうちのうさぎが普段どれくらい水を飲んでいるのか? しっかり把握しておくことが大切。
飲水量が急に増えたり、減ったりしたときは、体調の変化や病気の可能性もあります。食欲や元気がないときは、早めに病院で診察を受けましょう。
飲水量が増えると、オシッコの量も増えます。飲水量が多い子の場合は、トイレが汚れやすいので、ひんぱんに掃除をして清潔に保ちましょう。
うさぎのオシッコの色や濃度は飲水量によって変わります。
正常なうさぎの尿色 | にごった白~黄色、エサの色素によって赤~オレンジ | |
飲水量 | 少ない | 多い |
オシッコの濃度 | 濃くなる | 透明に近い |
透明な尿がたくさん出ているときは腎臓に問題がある可能性が。症状が続くときには、一度病院で検査を受けましょう。
飲ませかたは給水ボトル?置き水?どっちがいい
うさぎに水をあたえるときには、ケージに取りつけられる給水ボトルがオススメ。
容器に水を入れて置いておくと、うさぎが動いたときにひっくり返して飲めなくなってしまったり、体が濡れてしまったりすることも。ケージの床がぬれると、いろんな菌が繁殖しやすい状態になってしまいます。
給水ボトルの場合は、ペットボトルを使用するタイプもあります。ボトルは水を入れているだけでも、汚れが蓄積してしまうもの。ときどき新しいものに交換して、清潔な状態を保つようにしましょう。
なかには給水ボトルで飲むのが苦手なうさぎもいます。それぞれのうさぎに合った方法で、いつでも新鮮な水が飲める状態にしてあげることが重要です。
急に水を飲む量が増えた理由
うさぎの飲水量が急に増えるのは、脱水症状を起こしているとき。下記のような病気の可能性も考えられます。
- 慢性腎不全
- 糖尿病
- 毛球症・うっ滞
- 肝不全
- 粘膜性腸疾患
- 腸性毒血症
食欲や元気があるかどうか確認して、いつもと様子が違う場合は早めに診察を受けましょう。
慢性腎不全
腎臓のはたらきが悪くなってしまうこと。
体内の水分量の調整ができなくなるので、オシッコの量が増えます。出ていった水分をおぎなうため、たくさん水を飲むようになります。
糖尿病
ブドウ糖が細胞にうまく取り込めなくなり、血液中の糖の値が高くなってしまう病気。血液の濃度を一定に保とうとするはたらきにより、体内の水分が血管内に引っぱられます。そのため、体内の水分のバランスが乱れて多飲多尿に。
毛球症・うっ滞
消化器のはたらきが弱まり、飲み込んだ毛や食べものが消化できずに詰まったり、ガスが溜まったりすること。食欲や元気がなくなり、体重も減少します。
肝不全
肝臓の機能がうまくはたらかなくなる状態。
食欲不振、元気がなくなるなどの症状が出ます。消化器疾患で体内にガスや毒素が発生することにより肝臓に影響をあたえることも少なくありません。
粘膜性腸疾患
3~10週齢の子うさぎによくみられ、腸内にガスや液体が溜まり、死に至ることが多い病気。症状としては、食欲低下、飲水量の増加、粘液状の下痢、脱水が起こります。
腸性毒血症
クロストリジウムという細菌が産生する毒素による中毒症。
食欲不振、発熱、水下痢などが見られます。
水を飲まない理由
反対にうさぎが水を飲まなくなるのは、ストレスや食欲不振の初期症状であることが多いです。
冬
気温が低くなる冬は、体温が上がりにくいので、ほかの季節よりも水を飲む量が減る傾向にあります。
しかし、冷えによっておなかの調子が悪くなり、水を飲まなくなるケースも。気づかないうちに脱水症状になってしまうと、食欲不振をまねき、どんどん体調が悪くなってしまいます。
うさぎにとって、寒さがストレスとならないよう、ケージをおおったり、ヒーターを設置したりして、快適な環境を保ってあげましょう。
夏
気温が高い夏は、熱中症に注意。うさぎは汗をかくことができないので、体温調節が苦手です。短時間で急激に体温が上昇してしまうことも。そうなるとぐったりして、食べたり飲んだりもできず、脱水症状におちいってしまいます。
すぐに涼しい場所に連れていき、水でぬらしたタオルで体や耳を冷やしましょう。症状がひどい場合は、早急に病院で診察してもらう必要があります。
熱中症とまではいかなくても、夏場は暑さがストレスとなり、水を飲まなくなることも。温度、湿度ともにとくに気を配り、新鮮な水をいつでも飲める状態にしておくことが大切です。
野菜に含まれている水分量
野菜をあたえる場合、野菜に含まれる水分を摂取するので、水を飲む量が減ることがあります。
うさぎによっては、水分の多い野菜を食べ過ぎると下痢をしてしまう子もいるので要注意。
うさぎにあたえてもよい野菜やくだものに含まれる水分量は下の表のとおりです。
野菜の種類 | 100gあたりに含まれる水分量(g) |
にんじん | 89.1 |
キャベツ | 92.7 |
こまつな | 94.1 |
ブロッコリー | 89.0 |
セロリ | 94.7 |
レタス | 95.9 |
いちご | 90.0 |
すいか | 89.6 |
りんご | 83.1 |
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
うさぎにあたえてもよい野菜やくだものの水分含有量は、おおよそ85%以上。
うさぎが水をあまり飲まないとき、食欲が落ちているときに、野菜やくだものをあたえると栄養と水分を同時に摂取できます。
うさぎに水をあたえるときの注意点
うさぎにとって、いつでも好きなときに水を飲める環境が必要不可欠です。
水をあたえるときには、
- 1日1回は水を新しいものに取り換える
- 硬水のミネラルウォーターは避ける
- 給水ボトルの飲み口は毎回チェック(水もれや詰まりがないか)
- 水を飲む量を把握しておく
- 急に飲む量が増えたり減ったりした場合はストレスや病気の可能性も
これらのことに気をつけましょう。
まとめ
人間とおなじように、うさぎにとっても水は必要不可欠なもの。個体差はありますが、うさぎはたくさん水を飲む動物です。
うさぎの食欲不振は、ストレスや環境の変化、エサの変化、病気など、さまざまな原因がありますが、水を飲む量が減っていないか? もチェックすべきポイント。
水を飲まないことで脱水になり、さらに食欲不振が進むという悪循環をたどることもあります。
我が家のうさぎの場合、長時間の移動のあとはあまり水を飲みません。2~3日で元の量に戻ることが多いのですが、食欲も落ちてしまうので、体調の変化に気をつけて様子を見るようにしています。
ほかにも、給水ボトルの飲み口のボールが詰まっていることに気づかず、半日ほど水を飲めていないこともありました。幸い体調不良にはつながりませんでしたが、それからは毎回水がちゃんと出ているかチェックしています。
ケージの中にいるうさぎは、のどがかわいても水を飲みにいけません。いつでも新鮮な水が飲めるようにすること、飲水量の変化をしっかり把握することで、うさぎが健康に過ごせるようにしたいですね。
育てかたで不明点があるなら、【うさぎの飼い方大辞典】初心者にもわかる77項目のはじめかたガイドを参考にしてくださいね。
出典:エビアン
出典:ときわ動物病院
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